申点50%固定は時代に合っているのか 不登校の声から見えた兵庫県高校入試制度の課題[神戸市北区]神戸市会議員 堂下豊史
申点50%固定は時代に合っているのか
不登校や障害のある子どもたちの声から見えた兵庫県高校入試制度の課題
2025年2月、神戸新聞に掲載された一つの記事が、兵庫県の高校入試制度が抱える課題を改めて浮き彫りにしました。
多様な学びの在り方を提案する市民団体「どんな子も暮らしやすい西宮を考える会」が実施したアンケートからは、兵庫県の公立高校入試において大きな比重を占める「内申点」が、子どもたちに強いプレッシャーを与えている実態が明らかになりました。特に、不登校や障害のある生徒を抱える家庭にとって、高校選びそのものが大きな壁になっている現状が伝えられています。
内申点が中学生の生活を縛っていないか
アンケートは2023年9月から11月にかけてインターネット上で行われ、県内外から保護者を中心に232件の回答が寄せられました。
「良い点」としては「勉強に目標ができる」が多く挙げられた一方で、「悪い点」として最も多かったのは「テストが内申点に影響し、大きなプレッシャーを感じる」という声でした。
さらに、「勉強がテストのためだけのものになっている」「内申点を気にして、先生に言いたいことが言えない」といった声も多く、中学生活そのものが“入試のため”に窮屈になっている実態が浮かび上がっています。
記述欄には、不登校や発達障害、学習障害(LD)などを背景に、合理的配慮の充実を求める切実な意見も数多く寄せられました。
兵庫県の公立高校入試は「5対5」
兵庫県の公立高校入試では、内申点(調査書)と学力検査の配点が「5対5」、つまり50%ずつに固定されています。
内申点は、日頃の成績や提出物、授業態度など学校生活全体を評価するものです。この比重が高いことが、不登校や障害のある生徒にとって大きな心理的負担となっているという声は、これまでも繰り返し指摘されてきました。
全国47都道府県の中で、このように評価割合を一律50%に固定しているのは一部に限られています。他県では、学校ごとに評価割合を柔軟に設定するなど、学び方や背景の多様化に対応した制度設計が進められています。
首長からも示された問題意識
この課題については、市民団体だけでなく、自治体の首長からも問題提起がなされています。
芦屋市の高島市長は、「内申点の比率が50%に固定されていることで、不登校の生徒が公立高校進学を諦めざるを得ない」と指摘しています。
不登校の児童生徒が増加する中で、入試制度そのものが子どもたちを追い込んでいないか――。これは一部の家庭だけの問題ではなく、社会全体で向き合うべき課題です。
教育こども委員会での提起
こうした市民の声や社会的な問題意識を踏まえ、私は2025年2月の教育こども委員会で、兵庫県の高校入試制度を取り上げました。
「兵庫県でも、公立高校の魅力を維持するためには、入試制度の見直しが必要ではないのか」
さらに、県の対応が進まない場合には、市立高校が主体的に、調査書と学力検査の評価割合を見直すことについても、市立高校の魅力向上の観点から検討すべきではないかと、踏み込んだ提案を行いました。
教育委員会の答弁と制度の壁
これに対し教育委員会からは、兵庫県の公立高校入試は県の選抜要綱に基づいて実施されており、複数志願制度の下では、すべての公立高校が統一した基準で合否判定を行う必要があるとの説明がありました。
学校ごとに評価割合を変更すると、県立高校との複数志願ができなくなる、入試日を別日に設定する必要が生じる、といった課題があるため、慎重な対応が必要だとされました。
一方で、総合学科や理数科、国際科などの特色ある学科では、推薦入学や特色選抜を通じて、適性検査や小論文、実技などを組み合わせた独自の基準で選抜が行われていることも説明されました。
文科省も評価の在り方を明確化
不登校生徒の評価をめぐっては、昨年8月、文部科学省が欠席中の学習成果も成績評価に反映できることを法令上明確にしました。
これは、不登校の子どもたちの努力が、必ずしも十分に評価されていないという現場の課題を踏まえた対応であり、制度と実態の乖離を埋める重要な一歩だと受け止めています。
2025年3月 決算特別委員会でさらに踏み込んだ質疑
こうした問題意識を受け、2024年3月の決算特別委員会では、会派の坂口有希子議員が、さらに踏み込んだ質疑を行いました。
坂口議員は、市立高校入試における調査書と学力検査の評価割合が一律50対50に固定されている点について、この制度が不登校生徒の進学機会を制限する要因になっていると指摘しました。全国的に見ても、この方式を採用しているのは約10県に限られており、大阪府では各学校が柔軟に評価割合を設定できる制度が導入されていることも紹介されました。
市立高校独自の改革は検討できないのか
坂口議員は、不登校の生徒を持つ保護者から「内申点が十分に評価されず、公立高校への進学を断念せざるを得なかった」という声が寄せられている実態を示しました。
その上で、先の常任委員会で提案された「県が入試制度の見直しに消極的な場合、市立高校が独自に評価割合を変更することは検討できないのか」という点について、改めて教育委員会の見解を質しました。
教育委員会からは、複数志願制度との関係や入試日程の問題などが示され、市立高校のみが独自に評価割合を変更することについては、慎重な姿勢が示されました。
「時代に合わなくなってきている」という認識
一方で教育委員会からは、不登校生の増加、学びの多様化、高校授業料無償化の拡大による環境変化などを踏まえ、現在のような一律の基準による兵庫県の公立高校入試制度は、時代に合わなくなってきているとの認識も示されました。
今後は、県教育委員会と早急に協議を進めるとともに、現行制度の中で市としてどのような工夫ができるのかを検討していく、との答弁がありました。
不登校を「不利」にしない入試制度へ
不登校は、誰にでも起こり得ます。それが将来の選択肢を狭める理由になってはなりません。
今回の一連の質疑は、不登校の子どもたちや保護者の声を起点に、兵庫県の高校入試制度が今の時代に合っているのかを問い直すものです。
公立高校の魅力を維持・向上させるためにも、そして、すべての子どもが自分の力で次の一歩を踏み出せるように。今後も会派として、粘り強く制度改善を求めていきます。
